研究概要 |
これまでにα2アドレナリン受容体(α2AR)のサブタイプα2A、α2B、α2CいずれかのmRNAとG蛋白質結合型内向き整流性カリウムチャネル(GIRK)サブタイプGIRK1/GIRK2のmRNAsをアフリカツメガエル卵母細胞(oocyte)に注入し、二つの蛋白質を細胞膜に同時に発現させ、機能的にも共役させることに成功した。α2ARのアゴニスト(UK14,304)刺激により生じるカリウム電流に対する静脈麻酔薬(ペントバルビタール・プロポフォール・ケタミン・アルファキサロン)、揮発性麻酔薬(ハロセン)、エタノールの作用をそれぞれのサブタイプについてアゴニストのEC_<50>値で調べた。全ての薬物で臨床濃度と高濃度の作用を調べた。静脈麻酔薬は全てのサブタイプでアゴニスト刺激カリウム電流にほとんど影響を与えなかった。エタノールは全てのサブタイプでカリウム電流を濃度依存性に増強したが増強の程度はGIRK1/GIRK2自体のカリウム電流に対する増強と同程度だった。またハロセンは全てのサブタイプでアゴニスト刺激カリウム電流を濃度依存性に抑制したが抑制の程度はGIRK1/GIRK2自体のカリウム電流に対する抑制と同程度だった。これらの結果から全ての薬物はα2ARには直接作用しないがエタノールとハロセンはGIRK1/GIRK2に対する作用を介して生体内でα2ARの生理的作用を調節している可能性があることがわかった。すなわちエタノールは内因性のカテコールアミンによるα2AR刺激によるカリウム電流を増強して鎮痛作用を発現し、一方ハロセンはα2AR刺激によるカリウム電流を抑制しハロセン麻酔の興奮症状や低濃度での痛覚過敏などの薬理作用と関係しているかもしれない。
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