研究概要 |
電気刺激で中脳中心灰白質(PAG)の吻側背側に排尿を抑制する部位を認めたことは、第7回神経因性膀胱学会で当科谷口が報告した。今回、橋の排尿促進部位(PMC)との神経線維連絡とその伝達物質について検討した。中枢での抑制系の伝達物質として頻度が高いのはGABAであり、PAGのGABAの分布密度は中枢神経系でも高いことが報告(1966 Minard, F.N)されている。 1998 Joseph W.Cheuのネコの視床下部での防御行動の神経線維連絡と伝達物質(GABA)の検討で用いられた手法と同様に電気刺激でPMCを探り、Fluoro-Goldを微量注入し逆行性にPAGの抑制の神経細胞を染色し、蛍光抗体法にてTexas-redでGABAを染め、その細胞を二重染色することを試みた。 電気刺激をしない状態では中脳吻側からPMC付近においてPAGの辺縁にGABA陽性の神経細胞が染まった。また、PAGの背側だけではなく腹側にも認められた。その細胞形態と染色された部位はPMCから逆行性に染色されるPAG辺縁の神経細胞体に類似していた。以上については第10回日本排尿機能医学会にて報告した。しかし、二重染色はまだうまくいっていない。 一方、PAGとPMCの同時電気刺激では排尿は抑制されるが、PMCにGABAの拮抗薬であるビククリンを注入すると、PAGの抑制効果は減弱する。このことより、PAGの抑制のニューロンはPMCを抑制しており、その伝達物質がGABAであることが示唆される。 このことについては、第92回 日本泌尿器科学会 総会で報告する予定である。
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