測定対象をA群:群馬大学泌尿器科にてPSA・直腸診・経直腸的前立腺エコーのいずれかにて癌を疑い、前立腺多数ヶ所生検施行前に抗p53抗体値測定を行った119例、B群:他医にて生検にて前立腺癌と診断されて当科に紹介され、当科にて臨床病期を決定し、治療開始前に抗p53抗体値測定を行った24例とし、癌症例および非癌症例の間で抗p53抗体値に差があるのかを検討した。また、癌症例においては臨床病理組織学的に分類して抗p53抗体値を比較し、それらの関連について検討した。測定はMBL社のELISAキット(測定下限値0.10U/ml)を使用した。 B群のうち、1例は抗体値0.22U/mlと異常値であったが、他の23例は0.10U/mlと測定下限値であったため、今回はA群の119例に症例を絞って検討を進めた。119例中、癌は57例に発見された。癌症例の抗p53抗体の平均値は、0.41±1.17U/ml、非癌症例では0.91±4.79U/mlとなり、非癌症例の方が高くなった。また、PSA4.1〜10.0ng/mlの範囲の症例(癌症例22例、非癌症例38例)において、ROC curveを作成し、抗p53抗体値、PSA F/T ratio、PSA densityの癌診断における有用性を検討したところ、抗p53抗体値が最も有用性が低く、PSA densityが最も有用性が高かった。癌症例57例を病理学的に分類し抗p53抗体平均値を比較すると、高分化型>中分化型>低分化型となり、primary Gleason gradeでは3>4>5となり、Gleason sumでは、7>6>8>9となり、悪性度が高いほど抗p53抗体値が低い傾向を認めた。TNM分類別では、TxN1Mx/TxNxM1>T3N0M0>T1cN0M0>T4N0M0>T2N0M0の順となり、癌の進行度との間に関連性を認めなかった。
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