大腸菌病原因子の機能解析をおこなうにあたり、本年度は尿路感染症の原因菌の分離、同定および研究協力患者の臨床情報のプロファイリングづくりを開始した。 つぎに、尿路感染症で最も大腸菌の分離頻度が高い急性単純性膀胱炎において、通常施行されているempiric therapyが妥当であるかを検討するために、急性単純性膀胱炎症例から分離された大腸菌において、薬剤感受性の年次推移を調査した。 【方法】1998年および2003年に札幌医大病院泌尿器科外来を受診した急性単純性膀胱炎症例から分離された大腸菌株を対象とした。薬剤感受性はMicroscan Walk Awayにより測定し、NCCLSの基準に準拠して判定した。 【結果】1998年、2003年に対象とした大腸菌はそれぞれ35株、53株であった。それぞれの年での耐性株は、ABPC 8株(22.9%)、13株(24.5%)、PIPC 5株(14.3%)、9株(17.0%)、CCL 3株(8.6%)、5株(9.4%)、CTM 0株、1株(1.9%)、CMZ 0株、1株(1.9%)、GM 1株(2.9%)、2株(3.8%)、MINO 0株、4株(75%)、FOM 0株、1株(1.9%)、IPM 0株、0株、ST 2株(5.7%)、6株(11.3%)であった。フルオロキノロンは1998年OFLX、2003年LVFXで測定しているが、それぞれ1株(2.9%)、5株(9.4%)で耐性と判定された。 【考察・結論】5年間で各種抗菌薬に対する耐性率は増加傾向にあった。急性単純性膀胱炎はフルオロキノロン系薬が第一選択薬として汎用されているが、フルオロキノロンに対して耐性と判断される大腸菌の頻度が増加していることが推測された。
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