研究概要 |
材料と実験方法 対象)2000年〜2004年に札幌医科大学にて分離された尿路感染症由来大腸菌249株。 対照)健常人糞便株50株(Kanamaruら:J Urol 170:2490,2003)。 方法)病原因子はkpsMT, ompT, uspをPCR法にて検出し、χ^2検定にて統計解析を行った。 結果 1.kps, ompT, uspの分布:膀胱炎株(n=106)および腎孟腎炎株(n=32)における保有頻度はkps、ompT、uspそれぞれ74.5%、81.1%、66.0%および81.3%、84.4%、78.1%であり、膀胱炎株と腎孟腎炎株の間に差は認めなかった。一方、無症候性細菌尿由来株(n=103)においては、kps71.8%、ompT69.9%、usp61.2%と急性尿路感染症に比してやや低い傾向がみられたが、健常人糞便株との比較するとこれら3病原因子はいずれも有意に高い頻度で保有されていた。 2.kps、ompT、uspの病原因子間の相関:尿路感染症由来249株においてのオッズ比はompT vs. usp、kps vs. usp、ompT vs. kpsでそれぞれ142.8、22.2、12.8と非常に高く、各遺伝子間で極めて強い相関を認めた。無症候性細菌尿株のみに限定すると、各オッズ比は186、34.4、12.7と更に高い値を示した。過去の報告からompT、kps、uspは染色体上では同一の病原遺伝子島上には存在しないことが判明しているので、これら3遺伝子は機能的な関連が深いことが示唆された。とくにompT vs. uspのオッズ比は過去の報告と比べても非常に高く、無症候性細菌尿の病態にこれらの遺伝子が深く関わっている可能性が示唆された。 今後の展開 現在、さらに京都大学より収集された無症候性細菌尿株を含む約400株についても解析中であり、他の病原因子との関連、薬剤感受性、臨床像に関してもさらに検討する予定である。
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