培養ヒト膀胱癌細胞(T24細胞、KK47細胞)を用いて、脱リン酸化酵素であるカルシニューリンのconstitutive active変異体(自己阻害部位およびカルモデュリン結合阻害部位を欠失させたcDNAをlipofection法を用いて遺伝子導入した一過性過剰発現系)の作成を試みた。Positive controlとして、COS細胞を用いた。COS細胞に比較して膀胱癌細胞での遺伝子導入効率は低くカルシニューリンの機能解析には困難な系であると考えられた。Lipofection試薬の変更(LIPOFECTAMINEからFUGENE6に変更)により過剰発現系の作成を工夫し、膀胱癌細胞におけるカルシニューリンの機能解析を試みた。Bcl-2発現にカルシニューリンが関与する可能性についての報告があるが、膀胱癌細胞ではカルシニューリンのconstitutive active変異体はBcl-2発現には影響しないことをimmunoblot法で確認した。タキソール処理にてBcl-2は燐酸化されるが、constitutive active変異体ではBcl-2の燐酸化は抗Bcl-2抗体を用いてバンドシフト現象にて燐酸化を検討したが明らかな燐酸化の変化を認めなかった。そこでBcl-2リン酸化抗体をもちいたimmunoblot法で検討したところ、Bcl-2の燐酸化が有意に抑制される所見が得られた。つまり活性化型カルシニューリンによってBcl-2の脱燐酸化が促進し、その結果Bcl-2燐酸化が抑制されたと推測された。そこで、カルシニューリンconstitutive active変異体がタキソールが誘導する細胞死(アポトーシス)に影響を与えるか、現在FCMにて解析中である。
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