哺乳類精子受精能獲得過程を調節するリン酸化タンパク質の網羅的解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15790860
• 研究機関: 獨協医科大学
• 研究代表者: 藤ノ木 政勝 獨協医科大学, 医学部, 助手 (30316583)
• キーワード: 精子 / 受精脳獲得 / タンパク質リン酸化 / プロテオーム解析

研究概要

本年度予定していた研究計画のうち、これまでのハムスター精子を用いて検討で検出していた受精能獲得過程の初期(活性化状態)で起こる4種類のセリンリン酸化タンパク質について、そのタンパク質の同定および局在の検討を行った。同定の結果リン酸化されるタンパク質は、一つはβチューブリン、一つはATP合成酵素F1β、残り二つがピルビン酸デヒドロゲナーゼE1βであると同定された。さらに、これら二つのピルビン酸デヒドロゲナーゼE1βはチロシン浅基のリン酸化を起こしているか否かの違いがあり、またどちらも体細胞に存在するピルビン酸デヒドロゲナーゼE1βのN末端から30アミノ酸分の配列が欠けている事が分かった。次に、精子中での局在を検討した所、ATP合成酵素F1βについては精子頭部先体と鞭毛に存在し、特に鞭毛のミトコンドリア鞘付近に多く存在していた。ピルビン酸デヒドロゲナーゼE1βについては、チロシン残基のリン酸化が起こっていないものは鞭毛中片のミトコンドリア鞘に、チロシン残基のリン酸化が起こっているものは鞭毛主部の織維鞘に、それぞれ局在している事が分かった。
一方、新規にハムスター精子受精能獲得過程でリン酸化するタンパク質の検出を行った所、複数のリン酸化タンパク質が検出された。この内、精子鞭毛を単離・精製して検出を行った場合、見かけ上の分子量が10kDaのタンパク質がセリン残基のリン酸化を起こしていた。この10kDa タンパク質は以前の研究代表者の報告で運動活性化に伴ってcAMP依存的にチロシンリン酸化を起こすタンパク質と同一バンドである事が分かった。この10kDaタンパク質のアミノ酸配列を調べた所、昆虫でneuropeptideとして報告されているcarcinustatinと相同性のある配列が得られた。

研究成果

• [文献書誌] Fujinoki M, Kawamura T, Toda T, Ohtake H, Ishimoda-Takagi T, Shimizu N, Yamaoka S, Okuno M: "Identification of 36k-Da flagellar phosphoproteins associated with hamster sperm motility"Journal of Biochemistry. 133. 361-369 (2003)
• [文献書誌] Itoh A, Inaba K, Ohtake H, Fujinoki M, Morisawa M: "Characterization of a cAMP-dependent protein kinase catalytic subunit from rainbow trout spermatozoa"Biochemical and Biophysical Research Communications. 305. 855-861 (2003)
• [文献書誌] Itoh A, Fujinoki M, Kawamura T, Inaba K, Ohtake H, Shimizu N, Morisawa M: "Purification and characterization of the 15-kDa protein from the sperm flagella of salmonid fishes"Biomedcal Research. 24. 153-164 (2003)
• [文献書誌] Fujinoki M, Kawamura T, Toda T, Ohtake H, Shimizu N, Yamaoka S, Okuno M: "Identification of the 58k-Da phosphoprotein associated with motility initiation of hamster spermatozoa"Journal of Biochemistry. 134. 559-565 (2003)
• [文献書誌] Fujinoki M, Kawamura T, Toda T, Ohtake K.Ishimoda-Takagi T, Shimizu N, Yamaoka S, Okuno M: "Identification of 36k-Da phosphoprotein in fibrous sheath of hamster spermatozoa"Comparative Biochemistry and Physiology Part B. accepted. (2004)
• [文献書誌] Fujinoki M., Imaizumi Y., Ohtake H., Yamaoka S.: "Effects of dibromoacetic acid on murine spermatozoa and testis"Reproductive Medicine and Biology. accepted. (2004)