研究概要 |
【対象】平成15年7月より当センターで入院治療を受ける患者のうち,尿中剥離細胞における分子生物学的検討に対して十分な理解と承諾が得られた尿路上皮癌患者23人,泌尿器科良性疾患患者6人および健常人男性3人を対象とした. 【方法】治療前に対象より100mlの自排尿を採取.50mlを尿中サバイビンmRNAの定量に残りを尿細胞診に用いた.得られた尿は直ちに冷却遠心し洗浄操作の後,再度遠心し得られた沈渣は分析まで冷凍保存した.また,手術中に得られた組織検体も洗浄の後,分析まで冷凍保存した.サバイビンmRNAの測定は検体よりtotal RNAを抽出.サバイビン検出用Revers PrimerでcDNA合成を行いABI PRISM7700 Sequence Detectorを用いたReal-time PCR法にて行った.調整したスタンダードRNAの発光値を基準に定量値を算出した.また,同時にGAPDH mRNAの測定も同時に行いサバイビンmRNA測定値を補正した.尿細胞診はclassIV以上を陽性とし,病理学的所見は膀胱癌取り扱い規約に従い,組織の異型度は標本内に認められるより高い異型度とした. 【結果】病理学的には22例が移行上皮癌で,1例は腺癌であった.腫瘍組織中のサバイビンの測定は18例で可能で全例でサバイビンmRNAが検出されたが,膀胱全摘3例での正常膀胱粘膜ではサバイビンmRNAは検出できなかった.癌部のサバイビンmRNA量は10^<4.24>-10^<6.48>copies/total RNAと測定され,低分化癌で高値を示す傾向がみられた.尿中サバイビンの測定では膀胱腫瘍患者では20例中7例でサバイビンmRNAが検出されたが(10^<2.47>-10^<6.14>copies/total RNA),良性疾患6例および健常人ボランティア3例では検出できなかった. 【考察】膀胱腫瘍組織ではサバイビンmRNAは全例で検出できた.尿中剥離細胞での検出率は尿細胞診とほぼ同等であったが,採尿方法等を工夫することにより膀胱癌診断の補助検査として有用性を秘めていると思われた.
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