ヌードマウスの腎被膜下に異種であるラットの胸腺原基の移植を試みたところ、ヌードマウスはホストマウス由来のT細胞免疫能を獲得することができた(TGヌードマウス)。移植胸腺における種々の抗原の発現を免疫組織学的並びにFACS解析で検討した。ケラチン陽性の細胞である上皮細胞はすべてラット抗原を発現し、MHCクラスIとII(Ia)を発現していた。マウスIa抗原陽性の細胞は胸腺髄質内に集積していることから、樹状細胞であることが強く示唆された。またマクロファージはすべてマウス由来のものであった。リンパ球系の細胞はすべてマウス抗原を発現し、CD90、CD4、CD8、CD3、TCRαβの発現の量と質は正常マウスのそれらとほぼ同様であった。TGヌードマウスに種々の皮膚を移植したところ、syngeneicマウスと胸腺ドナーの皮膚は生涯生着したが、第三者の皮膚は単期間で拒絶した。ところがこのTGヌードマウスには臓器局在性の自己免疫病の多発が見られた。障害を受ける臓器は眼、涙腺、唾液腺、甲状腺、胃、卵巣、精巣、前立腺、等であった。障害を受ける臓器をあらかじめ移植ラット胸腺内に移植しておくと、対応するin situの臓器に障害は起きなかった。しかしながら、臓器をラット胸腺外に移植したのでは、無効であった。さらに標的臓器の代わりに、syngeneicマウスの胸腺原基の移植を試みたところ、自己免疫病の発症が完全に予防できた。胸腺はラットとマウスのキメラ構築を示していた。このマウスにはラット臓器の移植ができた。
|