BALB/cヌードマウスの腎被膜下に異種であるF344ラットの胸腺原基の移植を試みたところ、ヌードマウスはホストマウス由来のT細胞免疫能を獲得することができた(TGヌードマウス)。移植胸腺における種々の抗原の発現を免疫組織学的並びにFACS解析で検討した。上皮細胞はすべてラットのMHCクラスIとII(Ia)を発現しておりラット由来であった。マウスIa抗原陽1生の細胞は胸腺髄質内に集積し、それらの多くはCD11cを発現していることから樹状細胞であった。またマクロファージもすべてマウス由来であった。リンパ球系の細胞はすべてマウス抗原を発現し、CD90、CD4、CD8、CD3、TCRαβの発現の量と質は正常マウスのそれらとほぼ同様であった。TGヌードマウスに種々の皮膚を移植したところ、syngeheicマウスと胸腺ドナーの皮膚は生涯生着したが、第三者の皮膚は単期間で拒絶した。ところがこのTGヌードマウスには臓器局在性の自己免疫病の多発が見られた。障害を受ける臓器は眼、涙腺、唾液腺、甲状腺、胃、卵巣、精巣、前立腺、等であった。障害を受ける標的臓器を新生児のsyngeneicマウスから採取し、TGヌードマウスの腎被膜下に移植すると短日で激しい組織障害が見られた。ところが同じ臓器を胸腺ドナーラットから採取し、同様に移植したのでは組織障害は生じなかった。TGヌードマウスの移植ラット胸腺の中に新生児syngeneicマウスの胸腺を移植しておくと、ラットとマウスの胸腺上皮が生涯キメラを構築した。このマウスには自己免疫病は発症しなかった。
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