研究概要 |
これまでに家族性卵巣癌の原因遺伝子領域を罹患同胞対解析にて3p22-p25に限定し、続く相関解析にて同領域から候補遺伝子の選定を行っている。第3度近親者内に上皮性卵巣癌患者を2名以上含む家系を卵巣癌家系、第3度近親者内に乳癌・卵巣癌患者を含まない患者を散発性患者と定義し、インフォームドコンセントを得た後、'血液よりDNA、手術時摘出癌組織よりDNA、RNAを抽出。直接シーケンス法によりBRCA1,2の変異解析を行い、BRCA変異群、BRCA変異なし群、散発性群に分類し、BRCA変異なし群110人、健常女性170人を対象に相関解析を行ったところ、RAD18、FANCD2、CTNNB1遺伝子において有意な相関を認めている。そこで、BRCA変異群3例、BRCA変異なし群3例、散発性群3例を対象に、上記3遺伝子について腫瘍組織でのmRNA発現量をreal-time PCRにより解析した。その結果、CTNNB1では変異群で0.95±0.19、変異なし群で1.98±1.21、散発性群で1.65±0.45と、BRCA変異群では他の2群に比べ約1/2と発現が.低い傾向が認められた。一方、FANCD2では変異群で0.82±0.30、変異なし群で0.74±0.56、散発性群で0.80±0.72、RAD18では変異群で1.11±0.15、変異なし群で1.66±1.47、散発性群で1.27±0.97とほぼ同等の発現量を示していた。以上より、CTNNB1がBRCA変異群における卵巣癌発症に関し特異的に関与する可能性が示唆された。今後はDNAチップを用いて全遺伝子を網羅的に解析し、3群の比較によりBRCA変異群での卵巣上皮腫瘍化に関与する遺伝子群の検索を行う。
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