性ステロイドホルモン受容体遺伝子には、様々なタイプのアイソフォームおよびヴァリントが存在していることが明らかとなっている。これまでに、エストロゲン受容体アルファ(ERα)、エストロゲン受容体ベータ(ER□)、プロゲステロン受容体(PR)の各遺伝子において、(タイプ1)選択的な転写開始点の使用(PR)、(タイプ2)エキソンの欠失(ERα、ERβ、PR)、(タイプ3)エキソンの重複(ERα)、(タイプ4)選択的非翻訳第1エキソンの使用(ERα、ERβ)、ならびに、(タイプ5)選択的エキソン8の使用(ERβ)の5つのタイプのmRNAアイソフォームが生合成されることが明らかにされた。さらに、われわれは最近、ヒト精巣においてERα、ERβおよびPR遺伝子には、従来イントロンと考えられていた領域に新たなエキソンが存在し、そのエキソンからERα isoform S mRNA、ERβ isoform M mRNAおよびPR isoform S mRNAが転写されることを報告した(タイプ6)。これらの、新しいタイプのERα isoform S mRNA、ERβ isoform M mRNAおよびPR isoform S mRNAは、子宮内膜および子宮内膜癌において多く存在していることが確認されてきたが、子宮内膜癌の発生および進展においてどのような生理的働きをしているかについてはいまだ未解明である。 申請者は、本年、患者の同意を得て採取した正常子宮内膜および子宮内膜癌(Grade1〜Grade3)について、まず、各タイプ6mRNAを特異的に検出する系を確立した。さらに、確立したPCRの系を用いて各組織におけるタイプ6mRNAの存在について検討し、正常子宮内膜組織のみならず内膜癌組織にも多く存在していることを確認した。今後、Real Time PCR法を用いて定量的に計測し、子宮内膜癌の発現調節機構との関連を考える。また、タイプ6遺伝子の転写・翻訳調節機構の解析のため、各アイソフォームのプロモーター領域の解析も同時に行い、子宮内膜癌組織におけるプロモーター活性の変化を検討する。
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