研究概要 |
11β-hydroxysteroid dehydrogenase(11βHSD)はコルチゾールとその不活性型であるコルチゾンの変換酵素であり、11βHSD-1はコルチゾンをコルチゾールに活性化し、11βHSD-2はコルチゾールをコルチゾンに代謝することが知られている。本研究では胎盤の絨毛膜合胞細胞(S細胞)において11βHSD-1,2が炎症により影響されるか否かについて検討した。Forskolin添加により分化誘導したBeWo細胞をS細胞モデルとして用いた。11βHSD-1,2およびIL-1β、IL-1受容体遺伝子発現をRT-PCR法で検索した。炎症性サイトカインであるIL-1β存在下に分化誘導したBeWo細胞を培養し、11βHSD-2蛋白発現をWestern blot法にて検討した。IL-1β処理後の細胞をコルチゾール存在下に培養後、上清中の残存したコルチゾール濃度をEIAにて測定した。IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の作用についても評価した。分化誘導後のBeWo細胞において11βHSD-1とIL-1β遺伝子の発現はみられなかった。一方、11βHSD-2とIL-1受容体遺伝子発現がみられた。IL-1βの添加は分化誘導後BeWo細胞の11βHSD-2発現を抑制した。IL-1β処理後のBeWo細胞培養上清中のコルチゾール濃度は対照に比して有意に高かった。IL-1Raの併用添加はIL-1βの11βHSD-2発現抑制作用を減弱した。炎症性サイトカインであるIL-1βはS細胞においてHSD-2発現を抑制し、コルチゾール濃度を増加させることが示唆された。
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