11β-hydroxysteroid dehydrogenase (11βHSD)はコルチゾールとその不活性型であるコルチゾンの変換酵素であり、11βHSD-1はコルチゾンをコルチゾールに活性化し、11βHSD-2はコルチゾールをコルチゾンに代謝することが知られている。本研究では絨毛膜羊膜炎に起因する早産陣痛発来における11βHSD-1の役割を検討した。《方法》絨毛膜羊膜炎による早産症例5例と正常分娩症例5例の卵膜組織からタンパクを抽出し、Western blot法で11βHSD-1タンパク発現を比較した。陣痛発来前の予定帝王切開症例の卵膜から羊膜細胞を分離し、炎症性サイトカインであるIL-1β添加による11βHSD-1遺伝子の誘導をQuantitative RT-PCR法で、培養上清中のコルチゾール濃度をEIAで測定した。また、IL-1βならびにコルチゾール添加によるCOX-2タンパク発現をWestern blot法で検索した。《結果》早産症例で有意に高い11βHSD-1タンパク発現を示した。IL-1β添加は11βHSD-1遺伝子の誘導を濃度依存性に促進したが、培養上清中のコルチゾール濃度は変化なかった。IL-1β添加は24時間後のCOX-2タンパク発現を濃度依存性に増強したが、コルチゾール添加はCOX-2タンパク発現に影響しなかった。《結論》絨毛膜羊膜炎を起こした卵膜では11βHSD-1発現が増強しており、コルチゾンからコルチゾールへの変換が優位になっていると考えられるが、卵膜内でのコルチゾールの役割については明らかにならなかった。
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