研究概要 |
子宮内膜症発症のメカニズムとして,内膜細胞の異所性生着を許容してしまう免疫機構が注目されている.中でもNK細胞の機能低下が重用視されており,我々は機能低下の原因の1つとして,NK細胞表面上に存在する抑制性KIRの発現が内膜症婦人で増加しているか否かについて,これまでflow cytometryを用いて測定し検討を行ってきた.しかしこの方法では,細胞外ドメインのみを検出するものであり,抑制あるいは活性化のシグナル伝達を実際に行っている細胞内モチーフについての検討は行えなかった. 本研究ではその検討を行う目的で,計画当初KIR2DLおよびKIR2DSのm-RNAの発現をRT-PCRを用いて測定する予定であった.しかし,KIR2DLとKIR2DSのDNAの相同性が非常に高く,両者を判別できるprobeの作成は困難であった.そこでこの2分子の分子量の差に注目し,western blotを用いて両者の発現量を測定することを試みた.western blotでこの2分子の判別は可能であり,また蛍光強度を測定することにより発現量を測定することも可能であった.現在数例での検討であるが,KIR2Dの大部分は予想通りKIR2DL1が占めており,また内膜症婦人においては対照群に比較してKIR2DL1の発現が増加していることが確認できた. 今後症例数を増やし,内膜症婦人におけるKIR2DL1の増加をより明確にすること,さらにKIR2DL1とKIR2DS1との間の発現量の比において内膜症婦人と対照群との間に差があるかどうかを検討していく予定である.
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