研究概要 |
子宮頸癌の発癌機構についての研究は、1983年にzurHausenかヒト乳頭腫ウイルス(Human Papillomavirus, HPV)の関与を発表して以来、その事実は、特に扁平上皮癌では疑う点はもはやないまでに、in vitro、in vivo共に証明されてきた。ただし、in vitroにおいては、HPVのE6、E7遺伝子の導入によって、子宮頸部上皮細胞をはじめとする初代細胞に不死化が獲得されるものの、ヌードマウスへの造腫瘍能は見られない。実際にも子宮頸部上皮異形成のみならず正常子宮頸部にもHPVが検出される。そのため、HPV感染のみでは発癌には到らず、さらなるコファクターが必要と推測されている。実験系ではHa-Ras、K-Ras、v-fosなどの既知癌遺伝子の導入で造腫瘍能は獲得されるが、臨床検体ではその発現は普遍的には認められず、実際の発癌システムを必ずしも反映しないと考えられる。そこで私達は、子宮頸癌発癌への関与が疫学的に証明されている、喫煙に注目し、たばこの煙の濃縮物を用いて、HPV18型DNA導入による子宮頸部上皮不死化細胞に造腫瘍能を獲得させることに成功している。この一連の実験系は実際の発癌に近い形のモデルで、各細胞株間の遺伝子発現プロファイルを比較して、発癌の責任遺伝子(群)を明らかにする事を最終目的とし、今年度はその候補遺伝子の絞込みまでを行う事を目標としている。 現時点では、DNAマイクロアレイによる解析には、不死化細胞株と、その悪性形質転換株のRNAを用いることにより、遺伝子発現プロファイルの検討を行う予定で、現在解析委託をする業者との交渉中である。 解析結果が判明次第、候補遺伝子について、検討を行う予定である。 不死化細胞株の発育が遅く、各種解析に入るのにやや時間を要している状態で、DNAマイクロアレイ終了後には速やかに、次の段階移行する。
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