本研究は名古屋市立大学大学院ヒトゲノム倫理委員会へ申請し、平成15年12月に承認を得ている。充分なインフォームドコンセントののち、経膣または帝王切開分娩後の胎盤絨毛検体(子宮内胎児発育遅延3症例、正常3症例)よりそれぞれmRNAを抽出した。その後クローンテック社のcDNA subtractionキットを用いて、dT primerにてcDNAを合成して、一本鎖cDNAと二本鎖cDNAを合成した。続いて、子宮内胎児発育遅延症例の検体由来の二本鎖cDNAにAdaptorをつけて、両方の検体由来の二本鎖cDNAを2日間Hybridizationさせた。PCR続いてNested PCRを行ってアガロースゲルで電気泳動した。cDNA subtractionされたものが検出される。しかし、胎盤増殖・抑制因子に関係すると思われる遺伝子の明らかな発現を認めなかったため、現在はNCBI (National Center for Biotechnology Information) homepageで子宮内胎児発育遅延に有意に発現を認めるクローンを検索中である。 今後の候補クローンの解析のため手術症例より胎盤組織(妊娠初期〜妊娠後期)をサンプリングしている。それらを用いて胎盤における局在や発現パターンを解析する方針である。更に分娩に臍帯より胎児血を採取し、血清分離してフリーザーに保存しており、有意に増加あるいは減少している因子を今後ELISAで分析する方針である。これらの因子が発見出来れば、子宮内の胎児一胎盤発育に関与している可能性が示唆される。 我々は本年度に重篤な子宮内胎児発育遅延を認める症例を経験し、それが胎児異常を認め、出生前診断により9番トリソミーであり、子宮内胎児発育と関連していることを症例報告した。今後も臨床的に子宮内胎児発育遅延を認める症例があった場合、分子生物学的に解析する方針である。
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