子宮内膜症は性成熟期女性の約10%に発生し、慢性骨盤痛および不妊を症状とする慢性疾患である。その病因は不明ではあるが、integrin、metalloproteinase、VEGF、interleukin-6、aromatase、17β-hydroxysteroid dehydrogenase type2、glutathione peroxidase、cyclooxygenase-2、Bcl-2などの遺伝子の発現が正常子宮内膜と異なる。蛋白をコードするゲノムDNAのプロモータ領域がメチル化されると下流の転写が抑制されるが、正常子宮内膜では発現せず子宮内膜症組織で発現するaromatase遺伝子のプロモータ領域のDNAメチル化の差をmethylation-specific polymerase chain reaction (MSP)、bisulfite sequence法で検討した。正常子宮内膜、子宮内膜症組織ともメチル化したDNAフラグメントとメチル化していないDNAフラグメントが混在していた。正常子宮内膜および子宮内膜症組織の間質細胞を分離培養し検討したところメチル化したDNAフラグメントのみであった。今後、腺上皮細胞より特異的にゲノムDNAを抽出し、正常子宮内膜と子宮内膜症組織でDNAメチル化に差があるかどうか検討する。 本研究内容は平成11年に本学倫理委員会の承認を得ている。被験者からの組織の採取は開腹術のときに行い、患者および家族に本研究の趣旨を説明し同意が得られたならば所定の同意書に署名をもらう。説明の際には個人名を公開することはないこと、本検査結果がそれ単独で不妊症などの病態に結びつくことはないので人権の侵害にあたるようなことはないことを明言している。
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