【目的】卵巣明細胞腺癌はプラチナ製剤に低感受性である。現在までにその低感受性に関与する分子隼物学的機序は明らかにされていない。本研究の目的は、明細胞腺癌のプラチナ製剤抵抗性に関与する候補遺伝子を同定することである。【方法】1)4種類の卵巣明細胞腺癌株、KK、OVMANA、OVSAYO、RMG-1と、4種類の卵巣漿液性腺癌株、KF、HRA、SHIN-3、KOG-2Sを対象に、DMマイクロアレイにより遺伝子プロファイリングを網羅的に検討した。2)GPX3に対するステムループタイプのshort interfering(si)RNAを発現ベクター化し、GPX3高発現明細胞腺癌細胞4株に遺伝子導入した。3)遺伝子導入株のシスプラチンに対する感受性の変化をXTT assayにより検討した。【成績】1)DNAマイクロアレイによる検討から、明細胞腺癌に高発現する遺伝子として、glutathione peroxidase 3 (GPX3)を含む6つの遺伝子が同定された。2)GPX3抑制株4株を樹立した。3)4株中3株におい七dPX5抑制株はコントロールに比べてシスプラチンに対し3-4倍、高感受性となった。【結論】GPX3は明細胞腺癌のシスプラチン低感受性に関与する候補遺伝子のひとつであることが示されるとともに、GPX3を標的とした分子標的薬剤が、明細胞腺癌の治療に有効である可能性が示唆された。
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