近年、表層上皮性卵巣癌に対する化学療法の進歩によって初回治療時の奏功率や一時的な寛解率などの著しい向上が認められているが、新規抗癌剤の開発や臨床応用など卵巣癌の長期予後改善のための努力が行われているものの死亡率は増加傾向にある。本研究において、共同研究グループの石田らが最新の生殖医学技術を駆使してヒト抗体遺伝子全長をマウスへ導入して開発した完全ヒトモノクローナル抗体を産生するKMマウスを用いて卵巣癌に高い反応性を有するヒトモノクローナル抗体を作製し、卵巣癌に対する新たな治療法の開発を目的とした。 【平成15年度:卵巣癌に特異的に反応するヒトモノクローナル抗体の作製】 我々の研究グループが独自、に樹立した卵巣明細胞腺癌由来培養細胞株RMG-1でKMマウスを免疫しヒトモノクローナル抗体・HMOCC-1の作製に成功した。 1.HMOCC-1は抗マウス抗体とは反応せず抗ヒト抗体のみと結合したことからヒト抗体(IgM)であることが確認された。 2.免疫組織化学染色の結果HMOCC-1は表層上皮性卵巣癌全体の83.2%(84/101)に陽性であり、漿液性、粘液性、類内膜、明細胞の各組織型の陽性率はそれぞれ72.2%、90%、73.9%、90%であった。 3.HMOCC-1は胃、大腸などの他臓器の正常あるいは癌組織とも反応を示した。 現在、(1)HMOCC-1の認識抗原の同定、(2)HMOCC-1の機能の検討(RMG-Iとヒト腹膜中皮細胞の接着阻害実験)を進めている。
|