研究概要 |
1.(核タンパク質スポットの質量分析法による解析) 健常ボランティアより採取した精液検体からBalhornらの方法に従って塩基性蛋白を抽出、Kaltschmidt and Whittmann2次元電気泳動変法(Radical-free highly reduced method、以下RFHR法)を用いて分離した結果、ヒト精子核タンパク質は高い再現性をもって、13スポットに分離され、うち9個のスポットのN末端アミノ酸配列はプロタミン1、プロタミン2、プロタミン2前駆体および精巣特異的ヒストンに一致した。解析不能の4スポットおよび解析できたスポットの内部構造並びにC末端側の構造については確認できていないが,同定のため質量分析で解析中である。 4つのスポットはN末端配列が同一であり、プロタミン1と考えられた。プロタミン2もまた4つのスポットに分かれた。それぞれのN末端アミノ酸配列は、4つの報告されている精巣に存在するプロタミン2前駆体の部分配列に一致しており、前駆体に近いプロタミン2が相当量射出精子内に含まれていることが明らかとなった。 2.(分離スポットの定量) 上記の方法で分離されたヒト精子核塩基性タンパク質の構成比を染色後イメージアナライザによる解析したところ、ヒストンのスポット濃度より推定される精子核タンパク質全体に対する比はおよそ15%で、これまでの報告と一致していた。また、(P1の合計)/(P2の合計)は、これまで妊孕性のある男性について以前から報告されている値、すなわちプロタミン1/2比=約1と一致していた。 3.(男性不妊症症例よりの検体採取と保存) 同意を得て採取した男性不妊症患者精液より精子核蛋白を抽出、後日の解析に供するべく精液性状・臨床データと共に保存中である。
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