近年、肺小細胞癌細胞株において同定された22q12.1の染色体ホモ欠失より、新規の癌抑制遺伝子MYO18B遺伝子が単離された。同領域は卵巣癌においても染色体欠失が報告されているが、未だその標的遺伝子は同定されていない。これまでに、卵巣癌を対象とした同遺伝子のゲノム異常及び発現異常の解析により、その約7割において発現の異常が確認されている。 この発現異常のメカニズムを解明するために、インフォームドコンセントを得た同一の卵巣癌手術検体15例及び卵巣癌由来細胞株4株を対象に、転写開始点周辺のプロモーター領域のメチル化を、Bisulfite sequencing法を用いて調べた。手術検体では15例中2例(13%)で、また卵巣癌由来細胞株では4株中2株(50%)で、肺癌において確認された発現と相関する過メチル化サイトと同一の部位において、肺癌と同様に過メチル化が認められた。さらに、卵巣癌由来細胞株4株を対象に、5-aza-dC及びトリコスタチンA処理後のMYO18B遺伝子発現の有無及び程度をReal-time Quantitative PCR法にて検討したところ、MYO18B導伝子発現の認めなかった4株中3株において5-aza-dC及びトリコスタチンA処理により、MYO18B遺伝子発現の回復が認められた。 以上の結果は、卵巣癌におけるMYO18B遺伝子の発現異常の一部に同遺伝子のプロモーター領域のメチル化が関与していることを示すものである。今後さらに解析をすすめることにより、卵巣癌の発生や進展に関与する基礎的な解明につながるものと考えられる。
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