human colorectal adenocarcinomaを起源としたcell lineのうちCOL0320DMは癌胎児性抗原(CEA)の培養液中への分泌を認めない。WiDr、LoVo、COL0201、CCK-81といったcell lineでは分泌のレベルは異なるものの、培養液中へのCEAの分泌を認めた。本来細胞の膜画分に存在すべきCEAが培養液中への分泌されることに、GPI-PLDが関わっているかを調べるため、それぞれの細胞でGPI-PLDのタンパクレベルでの発現を調べたところ、すべての細胞でGPI-PLDの発現を認めた。この時、タンパクレベルではCEAの培養液中への分泌と、GPI-PLDの発現との間には有意な相関は認めなかった。しかし、CEA分泌を認める場合と認めない場合で、GPI-PLDの分子量に微妙な差がある事がわかった。これについては、現在追加実験により確認中である。この際、使用したわれわれが作成した抗GPI-PLD抗体の反応性が悪く、同抗体を新たに入手して次の実験に使用する事としている。現在使用している細胞でCEAの培養液中への分泌の動向を確認するため、CEAのpulse-chaseをおこなったがnativeのCEA発現量では十分なシグナルが得られない事が判明した。またこれにはCEAがシグナルシークエンス以外にMetを有さず、3H-Leuでのラベルを余儀なくされたことも悪影響を与えた。そもそも、CEAと同じGPIアンカータンパクのalkaline phosphataseをGPI-PLDが切断することは前年度までに証明しているが、CEAそのものについてはこの実験系では明らかにできなかったため、まず過剰発現の系での実験を行う事としたが、現時点ではCEAの発現ベクターを遺伝子組み換えにより作成した段階にとどまっている。
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