本年度の検討としては、アレルギー性鼻炎患者の下甲介粘膜におけるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)産生細胞の同定を施行した。 方法としては手術時に摘出したアレルギー性鼻炎患者下甲介粘膜および肥厚性鼻炎患者下甲介粘膜より凍結切片を作成した。活性化好酸球に対する抗体としてマウス抗ヒト好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)抗体、T細胞に対する抗体としてマウス抗ヒトCD3抗体、マクロファージに対する抗体としてマウス抗ヒトCD68抗体を使用しローダミン接合ヤギ抗マウスIg抗体で発色した。次にウサギ抗ヒトMIF抗体を反応させ、FITC接合ヒツジ抗ウサギIg抗体で発色。2重染色にてMIFを産生する細胞を同定した。 結果はEPOとMIFの2重染色像では、EPO陽性細胞はほぼ全細胞がMIFも陽性であった。一方、MIF陽性細胞も多くはEPO陽性でsingle positive細胞がわずかに散見された。ほぼすべての好酸球にMIFが発現しており、逆にMIF陽性細胞の多くが好酸球であった。CD3、CD68の染色では好酸球の染色とは違い、多くの細胞は、CD3、CD68あるいはMIFのsingle positive細胞で、double positiveの細胞がわずかに認められた。T細胞およびマクロファージのうちMIFが発現している細胞はごく少数であった。 以上の結果よりアレルギー性炎症局所においてMIFが炎症浸潤細胞に発現しており、その多くは好酸球であることが判明した。アレルギー性炎症局所においては好酸球がMIFのsourceである可能性が示唆された。
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