研究概要 |
自然免疫と獲得免疫の橋渡しをするサイトカインであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)に着目し、アレルギー性鼻炎における役割について検討を行なった。この研究課題採択以前に、研究代表者はMIFがアレルギー性鼻炎患者の末梢血中で増加し、その血中濃度は患者の臨床症状と同期することを報告していた。この研究課題では次のステップとして、以下2点について明らかにすることを目的とした。1.鼻粘膜浸潤する炎症細胞のなかで、MIFを産生する細胞を同定する。2.MIFの遺伝子ノックアウトマウス(MIF KOマウス)を用いてアレルギー性鼻炎モデルマウスを作成し正常モデルマウスとアレルギー症状、好酸球浸潤、鼻粘膜中のサイトカイン濃度を比較する。 1.MIF産生細胞の同定 アレルギー性鼻炎患者下甲介粘膜を抗MIF抗体と炎症細胞の表面マーカー(好酸球;EPO,マクロファージ;CD68,T細胞;CD3)の2重染色にて検討した。結果MIF陽性細胞の大部分はEPOも陽性であった。以上よりアレルギー性炎症局所でのMIF産生細胞は好酸球であることが判明した。 2.MIF KOマウスにおけるアレルギー性鼻炎モデルの検討 MIF KOマウスにおいては野生型マウスに比べアレルギー鼻症状(くしゃみ、鼻を掻く動作)が有意に減少していた。同様に鼻粘膜に浸潤する好酸球数も有意に減少していた。鼻粘膜中のサイトカインの検討ではTNF-αの濃度が有意に低下していた。以上よりMIFはアレルギー性炎症を増悪させることが判明した。
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