研究概要 |
今年度は、細胞障害の内的要因として、アポトーシスに関わる経路について検討した。 相同性配列検索プログラムBLASTや局在予測・モチーフ検索プログラムSOSUIを用いて、細胞の生死に関わるタンパク質を選び出し、免疫組織学的な検討を加えた。 マウス内耳コルチ器のうち、生直後は過剰に発現して、後に機能成熟する過程で選択的に細胞死してゆく組織である、Greater epithelial edge (GER)を研究対象とした。アポトーシスのシグナルを外的に加えなくとも、Caspase3を強く発現して細胞死に至っていることが確認された。相互作用するタンパク質としてCaspase8,9,12を検討した結果、Caspase12が強く発現していた。同蛋白は小胞体に局在し、細胞ストレスが加わった際に活性化されて、アポトーシスを誘導する。対して、Caspase8,9はミトコンドリアに局在し、アポトーシスに関わるものである。ミトコンドリア呼吸鎖の異常にて内耳障害が生じることは知られていたが、内耳の細胞死において小胞体も関わっていることが示されたのは、興味深い事実である。 更に細胞増殖と細胞老化に関わるp15-INK4b,p16-INK4a,p18-INK4c,p19-ARF,p21-WAF1について検討を行った。p18-INK4cは、内耳成熟時に有毛細胞の核に発現を認めた。細胞ストレス負荷時に発現されるphospholyrated p38-MARKは幼弱な生後早期のマウスには発現を認めなかったが、生後数ヶ月の大人のマウスにて柱細胞に発現を確認した。その機序は不明で、現在、リン酸化部位の違いによって発現が異なるか、数種の抗体を用いて検討中である。
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