滲出性中耳炎の治療に広く用いられているS-carboxymethylcysteine(S-CMC)の臨床的有用性を薬理学観点から検討するために、滲出性中耳炎の病態に深く関わっていることが知られている好中球の活性酸素産生能に及ぼすS-CMCの影響について検討を行った。ヒトおよびHartley系モルモットの末梢血を採取し、1×10^5個の好中球浮遊液を作成し、これに1×10^<-6>〜10^<-3>g/mlのS-CMCを添加し、その後fMLPとMCLAを添加し、Aloka社製のluminescence reader BLR301を用いて好中球の活性酸素産生能を測定したところ、S-CMCの濃度依存的に好中球活性酸素産生能が抑制されていた。またLipopolysaccharide17μl/100μlをモルモットのsuperior bullaより注入し、滲出性中耳炎を惹起し、実験的中耳炎モデルを作製した。それらのモルモットに中耳炎惹起1週間前よりS-CMC 100mg/kg/日、S-CMC 250mg/kg/日、およびコントロール群として生理食塩水を投与し、中耳炎惹起後4日目に中耳貯留液を採取し、さらに中耳腔を洗浄し、遠心分離にて細胞成分を集め、100μlに調整し、中耳腔内の活性酸素産生能を測定したところ、S-CMCの濃度依存的に好中球活性酸素産生能が抑制されており、250mg/kg投与群でコントロール群に比して有意に活性酸素産生能が抑制されていた。今回の実験結果から、好中球の活性酸素産生能に対するS-CMCの抑制効果が、滲出性中耳炎の治療におけるS-CMCの有益な薬理効果のひとつである可能性が示唆された。
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