内耳感覚細胞再生は現段階では未知の部分が多く、実用には程遠いのが現状である。我々はこれまで、内耳の発生過程においてアポトーシスが重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。また、近年、内耳の発生にはNotch signalによってコントロールされていることが明らかとなり、それに関わる遺伝子の発現を抑えることによって過剰の内耳感覚細胞が発生することがあきらかになった。アポトーシスの阻害およびNotch signalに関与する遺伝子発現の制御は内耳感覚細胞再生への重要な手がかりと思われる。種々の薬剤がアポトーシスやNotch signalに及ぼす影響を観察し、有効な内耳再生法を考察するためにはまず確実な内耳細胞の培養法の確立が先決と思われた。そのため、我々は胎生13日目のBALB/c系マウスの内耳を採取し、器管培養を試みた。培養細胞は約3日間は確実に生存することが明らかとなったが、母体内での発生に比較しやや遅れが見られる、前駆細胞の層が薄くなるなどの問題点が見られ、現在手法の改良を検討中である。
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