TLR4とMD-2の複合体がグラム陰性菌の細胞壁構成物質の一つであるリポ多糖(LPS)の受容体である。昨年、下気道上皮細胞においてTLR4は血液細胞と違い、細胞表面上には発現しておらず、細胞内のゴルジ体上に発現していることが明らかになった。その理由として気道は絶えず外界からの細菌に暴露されるため、TLR4が細胞表面上に発現することで生体内に過剰な感染防御反応を惹起させることが考えられる。そこで我々は同様に上気道の上皮細胞においてもTLR4の局在の違いがあると考えた。しかしこれまでの下気道における研究ではLPSのシグナルを細胞内に存在するTLR4に伝達するシステムが明らかになっておらず、上気道細胞株にてそれを明らかにすることを試みた。ヒト喉頭癌細胞株Hep-2、において免疫沈降法を用いて細胞表面上にてMD-2と共沈する分子を同定することを試みた。しかし現時点では新規の細胞表面分子は同定できておらず、現在も試行錯誤を続けている過程である。 さらに上気道は常時外界からの細胞およびウィルス感染の危険性に曝されているため、咽頭にワルダイヤ輪が存在する。そのために、上気道上皮細胞においては感染防御機構が他の部位と大きく異なることが予想される。そこでIn situ hybridization法を用いて上気道におけるTLR4の局在の特異性を比較することを検討している。現在実験機器が揃い、実験を開始したところである。
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