我々はラット蝸牛におけるヒスタミンレセプターの局在をタンパク質レベルで確認するため、ラット蝸牛凍結切片を用いて免疫染色を施行した。その結果、H1、H2、H3ヒスタミンレセプターのいずれもらせん神経節細胞において明らかな発現が認められた。H3ヒスタミンレセプターはコルチ器や蝸牛外側壁にもわずかな染色が認められたが、有意なものか否かは判定できなかった。この結果よりヒスタミンが蝸牛の神経伝達に何らかの機能を担っている可能性が示唆された。次にヒスタミンレセプターの欠損が聴覚伝達に影響を及ぼすか否かを調べるため、H1ヒスタミンレセプターノックアウトマウスの聴性脳幹反応を測定した。音刺激はクリック音を用い、90dBSPLからの下降法で聴力閾値を測定した。生後30〜50日のホモ、ヘテロ、野生型マウスについてそれぞれ施行したが、聴力閾値はいずれも30〜40dBSPLであり、有意差は認められなかった。さらにこれらのマウスの蝸牛凍結切片を作製しHE染色を行ったが、いずれも形態学的異常を認めなかった。以上の結果から、マウス蝸牛の生理的状態において、H1ヒスタミンレセプターが聴覚伝達に関与している可能性は低いと考えられた
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