原因不明とされてきた顔面神経麻痺であるベル麻痺に、近年単純ヘルペス(HSV)が深く関与していると報告されてきているが、それは涙液や唾液からのPCR法によるHSVの検出である。当科で年間約20人のベル麻痺患者が来院され、その内の多くが入院して加療を行う。これらベル麻痺患者の協力を得て、両鼓室内の中耳洗浄液を採取してPCR法を用いてHSVDNAの抽出を行う。中耳体積は平均0.65mlであるため洗浄液は0.5mlとした。洗浄液採取後は凍結保存しておく。後日Light Cycler-Fast Start DNA Master Hybridization Probesを用いてPCR法にてまずHSVDNAの定性を行う。現在まだ数名からしか採取できていない状態である。今後は症例を増やして、定性出来たHSVDNAをコピーして標準DNA鋳型とする。最終的に今までの涙液や唾液からの検出率と比較して中耳洗浄液からの検出率が高いか否かを検討していく予定である。それに加えてベル麻痺の極初期や2週間以上経過した症例でも今までは検出は不可能であったが、中耳洗浄液では検出出来るか否かについても検討していく予定である。また1.重症度とウイルス数との関係2.筋電図検査(ENoG)以上に予後判定の精度向上に寄与できる可能性の追求が期待できる。この事から早期発見、早期予後推測が可能になれば、現在の画一的治療と異なるオーダーメイド治療が可能になる事が期待される。
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