研究概要 |
視神経切断後の網膜において発現上昇が認められる分子で、代表者が単離した遺伝子、ARG357について、機能解析を進めた。ARG357は網膜より単離された分子であるが、Northern blotでは、全身の臓器において発現していた。in situ hybridizationにより、ARG357は正常網膜においては神経節細胞層での発現が認められた。神経節細胞層には網膜神経節細胞(RGC)以外に異所性アマクリン細胞が存在する。そこで、発現細胞の細胞直径を計測したところ、ARG357は殆どのRGCに発現していることがわかった。視神経切断後も神経節細胞に発現していたが、発現細胞の細胞直径には明らかな変化はなかった。ARG357が視神経切断後のRGCの細胞死に関与しているのか調べた。定量in situ hybridizationにより、個々の細胞レベルでは視神経切断後ARG357の発現上昇が認められた。アポトーシス誘導に関わるBH3-only proteinであるBimEL、Hrkも視神経切断後に網膜神経節細胞で発現が上昇する。そこで、ARG357とBH3-only proteinの相互作用を明らかにする目的で、ARG357を発現ベクターに組み込み、PC12細胞に導入した。その後、細胞を回収し、total RNAを抽出、定量PCR法によりARG357,Hrkの発現レベルを定量した。ARG357を強制発現した細胞ではBimELの発現上昇が認められたがHrkのレベルは変わらなかった。コントロールではBimEL,Hrkともに発現上昇は認められなかった。このことから、ARG357は視神経切断後に発現が誘導されBimELの発現上昇を介して網膜神経節紳胞のアポトーシスに関与していることが示唆された。
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