研究概要 |
軸索切断後の網膜神経節細胞(RGC)の生存と軸索再生が電気刺激によって促進できるかどうかを明らかにすることが本研究の目的である。 1)昨年度に引き続き、視神経切断直後の一過性の電気刺激によって、ネコRGCの1週間後の生存が促進可能かどうかについて調べた。RGCを予め逆行性標識しておき、切断直後にカフ型双極電極を装着し、持続時間300μsecのパルス刺激を20Hzで2時間加えた。一発のパルスの電流量は0(sham),0.5,1,3,5mAと変化させた。1週間後に網膜伸展標本上で生存細胞数を計数し、生存率を調べた。その結果、網膜全体にわたったRGCの生存率は、切断群の40.6%に対して3mAで75.5%と増加することがわかった。しかし、1mAでは網膜中心部だけには効果があるものの、網膜全体のRGCの生存率は、50.2%と有意な増加は見られなかった。 2)ネコ視神経を切断後、末梢神経を自家移植し、眼球側の視神経断端にカフ電極を設置した。カフ電極からの導線を、頭蓋骨上の小さな刺激装置に繋いだ。動物の行動をできるだけ抑制せずに意識下で慢性的に刺激するために、刺激コマンドを無線で頭蓋骨上の刺激装置に送り刺激した。毎日1時間の刺激を6週間行った後に、移植片の縫合部から2cm離れた部位に逆行性色素を注入したが、網膜上で標識された網膜神経節細胞は観察されなかった。これは、当初準備していた無線刺激装置の出力が最大約0.8mAと不足していたことに加え、連日の単相矩形波パルス刺激が、移植片そのものに障害を与えた可能性が考えられた。もし栄養因子の発現や感受性の増強が起こっているならば数日間は持続すると考えられることなどから、今後、3日おきなどの少し軽い電気刺激で再度検討する必要があると考えられた。
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