緑内障における網膜神経節細胞の細胞死には、グルタミン酸毒性やアポトーシスが関わるとされ、本疾患の治療における神経保護は命題である。CDP-choline(Citicoline)は、リン脂質の産生に重要な内因性ヌクレオシドで、膜安定化作用、アセチルコリンの生合成促進およびドーパミン代謝回転の改善作用等を有する薬剤であり、脳虚血において、アポトーシスの一部の系を抑制し、ドーパミンを増加させる。本研究においては、Citicolineが、緑内障性視神経症に対して神経保護作用を有するかを明らかにするため基礎的検討を行った。網膜への分化能を有する培養細胞にアポトーシスを誘導しCiticolineがこれを抑制するかについて検討したところ、Citicolineは濃度依存性にアポトーシス抑制効果を呈する傾向にあった。また、疾患モデル動物として、ラット高眼圧モデルを作製し、(1)Citicolille投与高眼圧群、(2)Citicoline投与眼無処置群、(3)対象高眼圧群および(4)対象群とした。網膜神経細胞死について、眼球から、網膜を摘出し、一眼は固定後スライドグラス上に伸展標本を作製し、TUNEL(terminal dUTP nick end labeling)染色を行った。また、他眼は固定後カスペース3免疫染色を行い、スライドグラスに伸展標本を作製した。光学顕微鏡下でTUNEL陽性細胞、蛍光顕微鏡下でカスペース3免疫組織陽性細胞数を全網膜にわたりカウントし単位面積あたりの陽性細胞数を各群間で比較したところ、in vivoにおいてアポトーシスを抑制する傾向にあった。これらについて次年度に引き続き例数を蓄積した上で統計学的検討を行うとともに、慢性高眼圧モデル、虚血再灌流モデルなど各緑内障モデルでの効果についても検討する。
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