網膜神経節細胞を再生するためには、神経幹細胞もしくは神経前駆細胞を、効率よく分化させることが不可欠となる。そのためには、適切な分化誘導因子を選択的に投与する必要があると考えられる。まず、適切な誘導因子を検索する目的にて、現在3系統の実験系が同時進行している。すなわち、1)胎生鶏卵から採取した網膜、2)網膜神経節細胞が細胞死をおこす緑内障モデルマウスであるDBA2/Jマウスの網膜、3)分化中の骨髄幹細胞の培養液、以上の3つのサンプルを用いたプロテオミクスによる解析が行われている。結果の解析はまだ終了していないが、各々の実験系におけるコントロールサンプルとの比較において、数多くの網膜神経節細胞分化誘導因子の候補となるであろうタンパクサンプルを挙げることに成功した(ただし、それらの同定には質量分析解析が必要であり、現在進行中である)。また、網膜神経節細胞分化誘導因子の候補の解析に必要となる胎生鶏網膜の3次元組織培養系を確立することに成功した。さらに、それら網膜神経節細胞分化誘導因子の一つとして、Pigment Epithelium Derived Factor (PEDF)に注目し、胎生鶏網膜の3次元組織培養系において、PEDFが網膜神経節細胞の神経軸索の伸長をつよく促進することを見出した。
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