方法:右眼の上強膜静脈燃灼によりラットの慢性眼圧上昇モデルを作製した。左眼は無処置とし、対照眼とした。眼圧は処置前と、眼圧上昇後は2週間に1回測定した。Ginkgo biloba(100mg/kg)を飲水により眼圧を上昇させる1週間前から投与し、投与群(5匹)と蒸留水投与群(5匹)とにわけ、5ヶ月間投与した。5ヶ月後に、3% fast blueを両側の上丘内に注入し、その5日後に網膜伸展標本を作製し、標識された網膜神経節細胞を数えた。 結果:上強膜静脈燃灼後の5ヶ月間、眼圧は対照眼の約1.5-1.7倍に維持された。5ヶ月間の慢性眼圧上昇眼の眼圧は、対照群およびGinkgo biloba投与群との間に有意差はなく、Ginkgo bilobaは眼圧に影響しなかった。網膜神経節細胞標識率は、Ginkgo biloba投与群で約90%、対照群で約70%であった。 結論:Ginkgo bilobaはラット慢性眼圧上昇モデルにおいて眼圧を下降させることなく、網膜神経節細胞障害に対して神経保護作用があることが今回の研究により示唆された。Ginkgo bilobaは一酸化窒素(NO)消去剤としての作用があることが報告されている。網膜神経節細胞死のメカニズムとして、NOが大量に放出されることにより、カルシウムの細胞内流入を促進し、細胞死を惹起すると考えられていることから、Ginkgo bilobaがNO消去剤としての作用することにより神経細胞死が抑制されたのではないかと考えられた。
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