研究概要 |
Sjogren症候群患者(SS)と正常者の結膜組織を結膜弛緩症手術時に得て、これに対して免疫染色を行った。SSと正常者結膜上皮細胞の比較遺伝子発現解析結果からSS結膜上皮における角化傾向と細胞増殖亢進傾向が考えられたので、これらに関連する蛋白であるTransglutaminase1(TGase1),Involucrin(IVC),Ki67、さらに上皮の状態を見るためにケラチン4/13,1/10ペアについて検討した。結果SS患者ではTGase1,IVCの発現が亢進していた。表皮で見られる完全型の角化ではケラチン1/10ペアが発現するのに対してSSではケラチン1/10ペアは発現せず、正常結膜と同様ケラチン4/13が発現していた。細胞増殖の指標であるKi67はSS結膜の基底細胞で陽性細胞数が増加していた。さらにSSでの病的状態と炎症との関連を調べるために、初代培養結膜上皮細胞(PCjE)とhTERTで不死化した結膜上皮細胞(HICjE)をIL-1とIFN-gammaで刺激して、SS結膜上皮細胞で発現が変化していたTGase1/3,KLK7,SPRR2A, Muc4,HLA-DR, Defencin beta2,を含む48遺伝子の発現を調べた。結果TGase1/3,Muc4,HLA-DRはIFN-gammaにより発現誘導され、Defencin beta2はIL-1により発現誘導されSOD-MnはIFN-gamma, IL-1の両方で発現誘導をうけた。これらの結果より、SSの結膜上皮は角化傾向にはあるものの完全型の角化ではなく不完全な角化、すなわちparakeratin izationであると考えられた。またSS結膜上皮はCell turnoverが亢進していると考えられた。さらにSSの眼表面での病態はすくなくとも一部は炎症性サイトカインによって誘導されている可能性が考えられた。
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