昨年度の検討では、原因不明ぶどう膜炎に関して検討を行ったが、今年度は対照症例として、原因不明例に加えてサルコイドーシス、トキソカラ症などのぶどう膜炎症例を加えてプロテオーム解析を行った。手術理由に関しては、硝子体混濁に加えて、昨年度の原因不明例同様、今年度も全例黄斑上膜形成が原因として存在していた。また、病態は異なるものの、いずれの症例も網膜血管を含んだ網膜滲出性病変を生じていた。術前に黄斑浮を生じていることは必要条件であり、蛍光眼底造影にて色素漏出所見があるのみならず、OCT(Optical COherence Tomography)にて網膜内に嚢胞が確認されることも条件としている。 今回のぶどう膜炎患者を対象としたプロテオーム解析結果の特徴としては、二次元電気泳動で対象、対照ともに非常に大きなスポットが共通して見られ、おそらくアルブミンを主体とした血漿蛋白の漏出によるものと考えているが、ぶどう膜炎という疾患の性質上網膜血液柵破壊による血漿蛋白の漏出が非常に著明に生じていることが予想された。今回黄斑浮腫の有無に関わらず、硝子体混濁は著明に存在していたが、その時点で眼内のバリヤーはすでに相当破壊されていると考えられた。対照症例の多くに共通して認められるような特異的蛋白の存在は認められなかったが、二次元電気泳動における大きなスポットにマスクされて黄斑浮腫特異的蛋白が存在している可能性は完全には否定できない。
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