研究概要 |
研究者は、近年免疫抑制物質として脚光を浴びている神経ペプチトの一種であるVIPに着目し、VIPを失明率の高いヒト難治性ぶどう膜網膜炎のモデルである、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)マウスに腹腔内投与し、検討を行った.VIPを腹腔内に投与するとEAUマウスが70%の割合で予防され,遅延型過敏反応も同時に抑制された.次にEAUが発症する前の7日間、発症した後の7日間に各々VIPを腹腔内投与したところ,陽性対照群と比較して両群ともに同程度の割合でEAUが抑制可能であった。またVIPとともに培養したマクロファージは,そのマクロファージを腹腔内移入されたEAUの発症を抑制でき,遅延型過敏反応も抑制することができた.一方,VIPで刺激されたマクロファージでは,膜表面の補助刺激分子の一種であるB7分子が抑制されている傾向にあった,VIPによるEAUの抑制は過去の他の自己免疫疾患モデルの系からTh2細胞の関与が予想されたため,WP刺激マクロファージからのIL-10産生の測定を試みたが有意な結果は得られなかった。これらの結果より,1)前房水成分の一種であるVIPは,遅延型過敏反応を抑制できることから抗原特異的な免疫抑制が働いていると考えられ,眼内という局所においても炎症を抑制することが可能であり,2)EAUが発症してからもVIPによる抑制がかかることから,ヒト難治性ぶどう膜網膜炎の治療に応用できる可能性がより広がったと考えている.さらに3)VIPを用いたマクロファージによる治療によりEAUが抑制できることから,VIPが細胞を介して抑制に働くことが解明されただけではなく,ヒトぶどう膜網膜炎に対する細胞治療にまで応用できると思われる.
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