角膜アログラフト移植のマウスモデルを用いて、角膜移植片と脾臓に存在する抗原提示細胞の性質を解析し、移植片の長期生着と拒絶との関連を検討した。その結果、拒絶された移植片では角膜内皮細胞が全て破壊されて無くなっており、拒絶反応後に半年以上が経過していても、移植片の内皮面は多数の活性化樹状細胞と活性化マクロファージによって覆われていた。また。移植片を拒絶した宿主の脾臓では、マクロファージの比率が正常の2倍に増加しており、特に主要組織適合複合体クラスII分子を発現する分画が10倍に増加していた。それに対して、半年以上の長期にわたり生着している移植片では、正常の角膜内皮細胞が維持されており、角膜内皮面に樹状細胞とマクロファージはごくわずかに存在していたものの、全て不活性の状態であった。これらの長期生着の宿主の脾臓では、辺縁洞B細胞の比率が増加していた。このような結果から、拒絶反応には移植片と脾臓における活性化したマクロファージと樹状細胞が関与しているのに対して、移植片の長期生着には、移植片に少数浸潤する不活性の抗原提示細胞と、脾臓辺縁洞B細胞が関与することがわかった。 また、1975年以降、正常角膜には骨随由来細胞は存在せず、角膜輪部(最周辺部)の上皮に配列するランゲルハンス細胞が主要な抗原提示細胞であると考えられてきたが、我々は、グリーンフルオレセイン蛋白(GFP)発現マウスをドナーとして同種同系骨随移植を行い、正常角膜の実質内にGFP陽性の骨随細胞がごく少数遊走していることを証明した。正常角膜内の骨随細胞は、上皮と内皮には存在せず、実質のみに存在しており、炎症時にも実質を主体に分布していた。これらの骨随細胞の性質や役割に関して、正常角膜と炎症角膜や移植角膜を比較して解析をすすめている。
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