我々は以前にウシ培養網膜色素上皮(RPE)細胞のオルニチンアミノ基転移酵素(OAT)を特異的阻害剤(5-FMOrn)で失活させてオルニチンを負荷する脳回転状脈絡網膜萎縮症のin vitroモデルにおいて、オルニチンにより傷害される細胞とされない細胞があることを明らかにした。このオルニチンによるRPE細胞傷害のヘテロ性がヒトにおいてもみられるかどうかを検討するため3種類のヒト培養RPE細胞株hTERT-RPE、ARPE19とD407を用いて実験を行った。細胞傷害はhTERT-RPEで著明にみられ、D407では軽度で、ARPE19では全くみられなかった。このことからオルニチンによるRPE細胞傷害はヒトにおいてもヘテロ性がある可能性が示された。また、細胞傷害がプロリンの添加によって救済されることがわかっているため、このhTERT-RPEでみられるオルニチンの細胞傷害が他のアミノ酸によって影響を受けるかどうかを明らかにするため、細胞を5-FMOrnで処理してOATを失活させ10mMのオルニチンを添加すると同時に中性、酸性、塩基性の20種類のアミノ酸を添加して、それらがRPE細胞障害に与える影響を検討した結果、プロリン以外にもロイシンなどの中性アミノ酸によって救済されることがわかった。酸性や塩基性アミノ酸では救済されなかったため、中性アミノ酸とその輸送が細胞傷害の鍵である可能性が示された。またこの細胞でアミノ酸輸送を行うアミノ酸トランスポーターのLAT1、LAT2、4F2hcなどの遺伝子発現が確認できたため、これらのアミノ酸トランスポーターがオルニチンのRPE細胞傷害に大きく関与していることが考えられた。
|