申請者らは以前に培養ヒト網膜色素上皮細胞のオルニチンアミノ基転移酵素(OAT)を特異的阻害剤(5-FMOrn)で失活させてオルニチンを負荷する脳回転状脈絡網膜萎縮症のin vitroモデルを確立している。この細胞傷害がプロリンの添加によって救済されることがわかっているため、この培養ヒト網膜色素上皮細胞でみられるオルニチンの細胞傷害が他のアミノ酸によって影響を受けるかどうかを明らかにするため、細胞をオルニチンアミノ基転移酵素阻害剤5-FMOrnで処理して失活させ10mMのオルニチンを添加すると同時に中性、酸性、塩基性の20種類のアミノ酸を添加して、それらが網膜色素上皮細胞障害に与える影響を検討した結果、プロリン以外にもロイシンなどの中性アミノ酸によって救済されることがわかった。酸性や塩基性アミノ酸では救済されなかったため、中性アミノ酸とその輸送が細胞傷害の鍵である可能性が示された。またこの細胞でアミノ酸輸送を行うアミノ酸トランスポーターのLAT1、LAT2、4F2hcなどの遺伝子発現が確認できた。さらにLAT1、LAT2の中性アミノ酸トランスポーターを特異的に阻害する物質2-amino-2-norbornane-carboxylic acid (BCH)を用いてこれら中性アミノ酸トランスポーターを阻害すれば10mMの濃度でオルニチンによる網膜色素上皮細胞障害が救済された。以上の実験から、これらのアミノ酸トランスポーターがオルニチンの網膜色素上皮細胞傷害に大きく関与していることが推察され、その抑制が網膜色素変性疾患の治療に応用できる可能性が示された。
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