私たちはこれまでの臨床研究で得た、新生児において血中Interleukin-1 receptor antagonist(IL-1ra)が周術期全体を通して乳幼児よりも高値を示すという結果から、新生児では単球のIL-1ra産生能が高く周術期の炎症性サイトカイン反応を抑制しているのではないかと仮定し、臍帯血コントロールの成人末梢血、各15検体から単球を分離し、単球の培養と刺激そしてIL-1ra産生能の検討を行ってきました。培養はコントロール群、LPS刺激群、Interleukin-1-beta(IL-1β)刺激群に分けて、2時間、6時間、24時間、48時間の4ポイントで上清を採取し、ELISA法にてIL-1ra濃度の測定を行いました。結果は、コントロール群では、3時間から24時間まで臍帯血のIL-1raが高値を示しましたが有意な差はなく、LPS、IL-1β刺激群はともに臍帯血と成人末梢血の間に差は見られませんでした。以上のデータからは、新生児の単球に特異的なIL-1ra産生能が存在するという結論には至りませんでした。臨床データと今回の実験結果が一致しなかった理由を考察すると、1.単球を刺激するLPS、IL-1βの量が適切でない可能性、2.好中球など他の細胞の産生能に差がある可能性、3.血中の単球数より差が生じている可能性などが考えられます。そこで今後は、好中球の分離培養や、LPSやIL-1βの量の見直しなどを行っていく予定です。また今回同時に測定したInterleukin-1 soluble receptor type 2は3群すべてにおいて臍帯血が成人よりも高値を示しており、新生児には他にも炎症を抑制するための独自のシステムが存在するのではないかと思われました。
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