研究概要 |
この研究の目的はラット異系小腸移植においてω3系脂肪酸がレシピエントとグラフトの免疫反応にどのような影響を及ぼすかを評価することである。 7週令のLewisラットをレシピエント、妊娠19日目のFischerラット胎仔をドナーとし、投与される食餌によりランダムに3グループ、つまりFOグループ(FO:魚油添加食)、SBグループ(SB=大豆油添加食)、コントロールグループ(Cont:通常ラット食)に分けた。レシピエントに各々の食餌を12日間投与した後、ドナーの空腸2cmをレシピエントの腹壁筋層内に遊離移植し、移植後2日目にレシピエントを犠死させ評価を行った。評価因子はレシピエント血中サイトカイン値(IL-2,IFN-γ,IL-1β値)とグラフトの病理組織所見とした。また病理組織所見は拒絶反応の程度を比較するために0-4の5段階(腸管形が完全に保持されているものが0、腸管形の残存がないものが4)にスコアリングを行い、その平均スコアで評価した。 まずサイトカイン値を以下に示す(単位はpg/ml)。IL-2:FO;22.0±10.9,SB;75.6±21.6,Cont;63.6±21.6。IFN-γ:FO;1.1±1.9,SB;3.8±1.8,Cont;9.2±7.8。IL-1β=FO;22.5±27.4,SB;120.6±106.5,Cont;164.2:±69.9。いずれもFOグループが他の2グループに比べ有意に低値を示し、拒絶が抑制されていることを示唆する結果であった。グラフトの病理学的所見では、コントロールグループでは腸管の形がかなり変形・吸収されているものが多かったのに比べ、FOグループ、SBグループではある程度腸管形が保たれていた。グラフト病理スコアはFO:2.1±0.74,SB:2.9±0.9,Cont:3.3±0.96であり、FOグループの平均スコアが他の2グループより有意に低く、拒絶が抑制されている所見であった。 以上の結果より、現時点でω3系脂肪酸はラット異系小腸移植において免疫抑制効果をもつと考えられた。
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