研究概要 |
皮弁の着者面積拡大を目的とした、ヒト塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor : bFGF)およびプロスタグランディンE1 (PGE1)の局所投与の効果を実験的に検討するために、まず、マウスにおける皮弁モデルの確立を目指した(symmetrical double flap modelの作成)。マウスの背部に左右1対の深腸骨回旋動静脈を茎とする島状皮弁を挙上し、筒状に形成する。この皮弁は栄養血管のみで全生着するため、深腸骨回旋動静脈を微小クリップで一定時間(4時間)血行を遮断し、虚血・再灌流障害を惹起させる。この操作によって、皮弁の約40%が生着するという結果が得られた。 このマウス実験モデルを基にして、bFGF・PGE1局所微量持続投与モデルを作成した。マウスの側胸部に皮下ポケットを作成し、浸透圧ポンプ(MINI-OSMOTIC POMP MODEL2001,alzet社製)を留置する。ポンプにはシリコン製カテーテルを連結し、筒状に形成した皮弁の内腔に留置する。一側のポンプにはPBS、bFGF、PGE1の混合溶液を、他側にはcontrolとしてPBSのみを入れる。これらポンプ内の溶液はカテーテルを通じて皮弁の内腔へ持続的に注入される。探腸骨回旋動静脈を4時間クランプし、虚血・再灌流障害を惹起させる。 7日後に皮弁の生着面積を測定する。また、筒状皮弁の内面に形成された肉芽組織等の状態を観察する。bFGF単独投与、PGE1単独投与、およびbFGF・PGE1混合投与のいずれにおいても、皮弁の生着面積の拡大効果は認められなかった。しかし、bFGF・PGE1混合投与群においては皮弁の内腔に著明な肉芽組織の増生が認められた。 こんご、皮弁を組織学的に分析し、肉芽組織および新生血管の定量測定を行う予定である。
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