ヒト塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor : bFGF)およびプロスタグランディンE1 (PGE1)の局所持続投与が皮弁の生着や血管新生に及ぼす効果について、マウス背部皮弁モデル(symmetrical double flap model)を用いて検討した。一側の皮弁にはPBS、bFGF、PGE1の混合溶液を、他側にはcontrolとしてPBSのみを投与する。皮弁の生着面積はいずれの薬剤投与によっても増加しなかった(以上、平成15年度までの研究結果)。 皮弁生着部の中央部より全層の組織を採取し、新鮮凍結標本を作成する。H-E染色のほか、毛細血管を染色する目的でindoxyl-tetrazolium法による酵素抗体法染色を行う。組織標本の顕微鏡写真をパソコン上で処理し(Photoshop、NIH-imaging)、肉芽組織の厚さおよび毛細血管密度の定量的測定を行った。 肉芽組織の厚さはbFGF単独投与群およびbFGF/PGE1混合投与群において著明な増加がみられ、とくにbFGF/PGE1混合投与群ではコントロール側との比較において有意差が認められた。一方、PGE1単独投与群においては肉芽組織の増加は認められなかった。 毛細血管密度はbFGF単独投与群においてはコントロール側と同程度であったが、PGE1単独投与群およびbFGF/PGE1混合投与群では、コントロール側との比較において有意な増加が認められた。さらに、bFGF/PGE1混合投与群の方がPGE1単独投与群よりも著明な血管新生を認めるという結果が得られた。 以上の結果より、bFGF、PGE1の局所微量持続投与は皮弁の生着には影響を及ぼさないが、肉芽形成促進や血管新生などの作用を有するため、目的に応じて薬剤を選択すれば褥瘡などの難治性潰瘍の治療に有効であると思われた。
|