大阪医科大学倫理委員会での承認を得た後、治療を希望する患者の皮膚を1×2cmの大きさで採取した。対象は1歳から11歳の小児11人で、平均年齢は6.36歳であった。次のような手順で試料を採取した。(1):保存したチューブ一本から線維芽細胞を取り出し、150cm^2のフラスコ5枚に播種し1週間培養する。操作はクリーンベンチで行い、フラスコは37度のCO2インキュベータに入れておいた。(2):1週目に、フラスコの培養液を1ml採取し冷凍保存(試料A)した。また、5枚のフラスコから線維芽細胞数をカウントし、シャーレ内のヒアルロン酸およびコラーゲンでできたマトリックスに5×10^4個/cm^2となるように播種した。マトリックスに生着するまで一晩インキュベーター内に保管した後、翌日、培養液をシャーレ内に追加し、1週間インキュベータ内で保管した。(3):(2)より1週間後にシャーレ内の培養液を1ml採取し冷凍保存(試料B)した。(4):シャーレ内の培養液は1週間ごとに入れ替えた。その際、培養液を1mlずつ採取し、冷凍保存しておいた。この操作を3週間続けた(試料C、試料D)。 このようにして採取した11人分のチューブを対象に、ELISA法を用いてVEGFについて定量をおこなった。結果:いずれの試料においてもVEGFの産生が確認できた。培養真皮作成後1〜3週間と時間が経つにつれて、その産生量は低下しているものの、3週目においてもVEGFの産生は確認できた。年齢・部位によるVEGF産生量の違いは、今回の研究では確認できなかった。考察:自家培養真皮は、患者自身の細胞を用いているため、線維芽細胞が免疫学的に拒絶されることはない。今回の研究では、創部植皮下に線維芽細胞がとどまり、VEGFを産生し続けることが示唆された。これは植皮片の生着、経過に有効な結果を与えると考えられた。
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