P63遺伝子の機能を解析するためP63遺伝子のノックアウトを行った。具体的方法としては短鎖2本鎖RNAを用いたRNA干渉(siRNA)法を用いた。RNA配列のデザインは論文的検討により行った。siRNAの細胞内への導入はアデノウイルスベクターを用いた。H5-RNAプロモーターにより目的とするsiRNAを発現させ、遺伝子導入のマーカーとしてCMVプロモーターによりGFP遺伝子を発現させ蛍光発光を観察した。 アデノウイルスベクターの産生効率は悪く、数回に及ぶ293細胞への再感染を行いウイルスターターを上昇させる必要があった。 まず、siRNAの作動確認のためP63橋陽性細胞であるME180細胞にP63-siRNA-アデノウイルスを感染させた。GFPの陽性率は80-90%で感染効率は良好であった。 P63遺伝子の発現抑止を検討するためP63蛋白をWestern Blot法にて測定した。 P63蛋白質はP63-siRNA-アデノウイルス感染後に有意に低下したが、その抑制効果の発現時期、強度は一定して折らず更なる検討が必要と考えた。 効果発現は不安定ではあるもののP63遺伝子の発現抑止効果は認められP63-siRNA-アデノウイルスによるsiRNAの発現は確認された。 つぎに本来の研究目的である正常ヒト分離ケラチノサイトにおけるP63遺伝子の機能を解析するためP63-siRNA-アデノウイルスを感染させ検討した。 ケラチノサイトはアデノウイルスに親和性があり感染効率がよい細胞として知られているがP63-siRNA-アデノウイルスを感染後、蛍光顕微鏡にて観察を継続したが蛍光発光はほとんど認められなかった。また細胞変性効果が著しくケラチノサイトの角化、細胞濃縮、浮遊などを認めた。 この原因として(1)P63-siRNA-アデノウイルスによる直接的細胞毒性の発現(2)ウイルス浮遊液によるケラチノサイトの変成効果の発現(3)p63遺伝子抑制による細胞死の誘導が考えられた。
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