本研究は骨基質への埋入から破骨細胞による骨吸収野に至るまでの骨細胞の機能活性状態の段階的推移を酵素活性・タンパク・ゲノムの発現状態を指標として区分し、その特徴や差異の解析から骨細胞の機能そのものを考察することを目的とし、また、これら指標の解析を骨表面での骨芽細胞・破骨細胞についても行い、骨添加・吸収および骨リモデリング全体においての、骨細胞の機能段階に応じた骨細胞-骨芽・破骨細胞間の細胞連鎖的機能相関のメカニズムを明らかにすることを長期的展望に据えて計画・遂行された。 骨吸収野における骨細胞-破骨細胞の機能相関については破骨細胞の活性マーカーとして知られる酒石酸耐性酸性フォスファターゼ(TRAP)に着目し、TRAPが骨細胞にも発現することを酵素活性・蛋白局在・mRNAの発現3つのレベルについて初めて証明した。さらにTRAP陽性の骨細胞の局在が破骨細胞による骨吸収部位近くに限局する事を示し、骨吸収野における骨細胞-破骨細胞間のbiological interactionが存在すること及びTRAPが細胞間コミュニケーションに何らかの関わりを持つ可能性も併せて示唆した。この結果はJournal of Histochemistry Cytochemistory52巻11号に発表された。 また骨添加部位については、骨芽細胞細胞膜上に存在し骨石灰化に深く関わるとされるphosphataseに注目し、骨芽細胞膜抽出物の電気泳動を行い、ゲル上での酵素活性パターンとwestern blottingによるタンパク発現のパターンの比較から骨芽細胞膜上には組織非特異的alkaline phosphataseとplasma membrane Ca-ATPase (PMCA)の両者が存在すること証明した。さらにその細胞膜上での局在パターンに極性があることを酵素組織化学・免疫組織学的に示した。同様の解析を組織非特異的alkaline phosphatase欠損マウスについても行い、骨芽細胞膜骨形成面に偏在するPMCAの骨石灰化への関与を示唆した。この結果はBONE35巻5号に掲載された。
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