研究概要 |
二次口蓋の形態形成過程において、口蓋突起尖端に位置する上皮細胞(MEE細胞)は予定口腔上皮・予定鼻腔上皮とは異なる表現型を発現し、左右口蓋突起間での接着誘導に働く。左右側のMEE細胞同士が接着すると、MEE細胞間での再配列によって連続した上皮索が構築され、次いで、上皮索の分断化・消失のプログラムが起動して左右側間葉組織の合流へと導いていく。本年度においては、この上皮索の消失機構に関連してMEE細胞でのプログラム死の発現と間葉織への細胞移住と形質転換(epithelial-mesenchymal transformation, EMT)を検証する目的で、マウス胎仔から採取した口蓋突起試料のTrowell法による器官培養を行なった。MEE細胞を蛍光標識剤(Dil、CCFSE)で標識し、上皮細胞の運動能を共焦点視野下でin situ観察することにより、一部のMEE細胞は間葉織に移住し、上皮マーカ(サイトケラチン)を失うことを証明した。さらに、これらの移住細胞は上皮索の内部において近隣のアポトーシス細胞を貪食することが引き金となり、運動能を高めることが想定された。この仮説を検証する目的で、カスパーゼインヒビターを添加した培養実験を行い、上皮索分断と間葉織への上皮細胞の移住が抑えられることを確かめている。現在、MEE細胞の動態を支配する遺伝子ネットワークを解明する目的で、胎仔二次口蓋組織と培養試料からmicrodissection法によりMEE細胞を分離し、接着関連分子(Eカドヘリン、βカテニン、アクチン、エズリン、CD44、シンデカン)、アポトーシス関連分子(caspases、サイトケラチン18)、細胞運動能の制御にかかわるSnailやSlug,細胞膜blebbingのエフェクターであるROCK-IのmRNA発現量をリアルタイムPCRで調べている。
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